昨日の夜、自分が作っているSEOツールの開発をやっていた。
AIで記事を自動生成するSaaSで、まだリリースしたばかり。やることは山ほどある。
で、その日やったことを振り返ってみたら、自分でもちょっと驚いた。
その日やったこと、全部書き出してみる
1つの開発セッション(だいたい2〜3時間くらい)でやったことを、そのまま並べてみる。
【機能改善】記事の品質を3段階でアップグレード
- 競合分析で抽出した「共起語」を、記事生成AIに渡すようにした(今まで分析しておいて使ってなかった)
- AI検索(ChatGPTやPerplexityの検索結果)に引用されやすい文章構造を、プロンプトに組み込んだ
- 記事のSEOスコアを「なんちゃって20点」から、8項目100点満点のリアル採点に作り替えた
- 記事生成後に、メタディスクリプションもAIで自動生成するようにした
- 構造化データ(JSON-LD)にHowToスキーマとFAQスキーマを追加した
ここまでが「記事品質の改善」。フロントエンド、バックエンドAPI、プロンプト設計、SEO設計、全部セットで変えている。
【バグ修正】記事が途中で切れる問題を直した
ユーザーから「記事が途中で止まる」と報告があった。原因を調べたら、AIへの指示を充実させた結果、出力が長くなって上限に引っかかっていた。max_tokensを8,000から16,000に上げて解決。原因特定から修正まで5分。
【LP改善】デモ動画をAPNGに変換してLPに埋め込んだ
「ツールを使っている様子を見せたほうが伝わるよね」ということで、画面録画のMP4動画をAPNG(動くPNG)に変換。カクカクしたコマ送り感のある、ちょっとレトロな雰囲気のアニメーションにして、LPの「使い方3ステップ」セクションに埋め込んだ。ブラウザ風のフレームも付けて、それっぽく仕上げた。
【デバッグ】本番環境のエラーを調査・改善
構成案の生成で500エラーが出ているという報告。APIのエラーハンドリングが雑で「失敗しました」としか表示されていなかったので、実際のエラー内容が見えるように改善してデプロイ。
【デプロイ】全部まとめて本番に反映
変更をコミットして、GitHubにプッシュ。Vercelが自動でビルド&デプロイ。本番環境に反映完了。
1人で、2〜3時間で、これ全部。
ちょっと冷静に考えてほしい。
従来の開発フローだと、上に書いたことは最低でもこうなる。
- プロンプト改善 → AIエンジニアが設計・テスト(1〜2日)
- SEOスコアロジック実装 → バックエンドエンジニアが設計・実装・テスト(2〜3日)
- メタディスクリプション自動生成 → API設計 + フロント連携(1〜2日)
- バグ修正 → 再現確認・原因調査・修正・レビュー・デプロイ(半日〜1日)
- LP改善 → デザイナーに相談・素材作成・コーディング(1〜2日)
- デプロイ → QAチェック・ステージング確認・本番反映(半日)
合計すると、だいたい1〜2週間はかかる作業量だ。チーム間の調整やレビュー待ちを入れたら、もっとかかることもある。
これを、1人で、1セッションでやった。
「で、どうやったの?」
ここでタネ明かしをする。
AIエージェント(Claude Code)と一緒に開発した。
ただし、「AIに全部丸投げした」わけじゃない。ここが大事なポイント。
実際にやったことはこんな感じ。
- まず調査させた。「記事生成まわりのコードを全部読んで、改善点をまとめて」と指示。AIがコードベース全体を読み込んで、問題点と改善案をレポートにまとめた。
- 計画を立てさせた。調査結果をもとに「implementation.md」という実装計画書を作らせた。フェーズ分け、変更ファイル一覧、具体的なコード例まで入った計画書。自分はそれを読んで「OK、この方針で」と承認した。
- 実装させた。計画に沿って、AIが1ファイルずつコードを書いていく。自分はたまに「ここはこうしたほうがいいんじゃない?」と方向修正する程度。
- 問題が起きたら、その場で直した。記事が途中で切れる→原因を特定→修正→デプロイ。このサイクルが数分で回る。
つまり、自分の役割は「判断」と「方向づけ」。手を動かす部分の大半はAIがやっている。
これ、組織にとって何を意味するのか
ここからが本題。
1人の人間がAIと組んで、2〜3時間でやれることが「チーム1〜2週間分」だとしたら。組織はどう変わるべきなのか。
「開発チームを増やす」が正解じゃなくなる
これまでは、開発を速くしたければ人を増やすしかなかった。でも人を増やすと、コミュニケーションコストが増える。「10人のチームは、5人のチームの2倍速い」なんてことは絶対にない。むしろ遅くなることすらある。
AIエージェントとの開発は、この構造を根本から変える。1人が「判断する人」として、AIに手を動かさせる。レビュー待ちも、MTGも、Slackでの仕様確認も、全部なくなる。
「思いついたらその日に直せる」が当たり前になる
今回の「記事が途中で切れる」バグ。報告を受けてから修正・デプロイまで、10分もかかっていない。
従来なら、Issueを立てて、優先度を決めて、スプリントに入れて、担当を決めて……気がつけば「来週やります」になる。ユーザーはその間ずっと不便なまま。
「報告→5分で直す→デプロイ」。この速度感に慣れると、もう戻れない。
競合との差は「アイデアの量」ではなく「実行の速度」になる
正直、自分がやったことに革新的なアイデアはひとつもない。
- 共起語を記事に含める → SEOの基本中の基本
- AI検索対策 → 業界ではみんなやりたがっている
- SEOスコアの可視化 → 他のツールもやっている
- デモ動画をLPに載せる → マーケティングの定石
全部「やったほうがいいよね」って、誰でも思いつくこと。
差がつくのは「思いついてから実行するまでの時間」だ。
アイデアを思いついた日に、実装して、デプロイして、ユーザーに届ける。これができるチーム(あるいは個人)と、「来月のスプリントに入れましょう」と言っているチーム。半年後にどっちが勝っているかは、考えるまでもない。
「でもうちは大企業だから無理でしょ」と思った人へ
たしかに、全社的にいきなりこのスタイルに切り替えるのは無理だ。
でも、小さく始めることはできる。
たとえば、社内ツールの改善。誰も文句を言わないけど、みんなが「ちょっと使いにくいな」と思っているあのツール。それを1人の担当者がAIエージェントと一緒に、1週間で作り直す。
あるいは、マーケティングのLP。「数値が落ちてきたから改善したい」と半年前から言っているあのページ。デザイナーやエンジニアのリソース待ちで止まっているなら、マーケターが自分でAIと一緒にやってみる。
大事なのは「AIを使って開発速度を上げられることを、組織の中の誰かが体験すること」だ。体験した人は、もう元には戻らない。そして、その人が周りに伝染させていく。
まとめじゃなくて、正直な感想
記事っぽく締めるのもアレなので、正直に書く。
この速度で開発できるようになって、一番変わったのは「やりたいことを先送りしなくなった」こと。
前なら「いつかやろう」リストに入れて終わりだったことを、思いついたその場でやれる。やってみて微妙ならすぐ戻せる。このサイクルが速いから、プロダクトが毎日少しずつ良くなっていく。
逆に言うと、この速度を持っていない組織は、持っている組織に毎日少しずつ差をつけられていく。1日の差は小さい。でも半年、1年経つと、取り返しがつかないくらい開く。
これは脅しじゃなくて、実感として。
この記事で書いた開発セッションは、2026年3月1日に実際に行ったものです。使用したAIエージェントはClaude Code(Anthropic社)。






