この記事でわかること
- Google広告の管理画面だけでは見えない「成果の穴」の正体
- 問い合わせの先(カウンセリング到達・成約)まで追跡する方法
- 間接効果を「なんとなく」で評価してはいけない理由
- 月100万円の無駄を回収した具体的な手順
はじめに — 管理画面のCVは「中間成果」でしかない
Google広告を運用していると、管理画面の数字に安心しがちです。クリック数は増えている。コンバージョン(問い合わせ)も毎月入ってきている。CPAも許容範囲内。
でも、ちょっと待ってください。
その「コンバージョン」の先はどうなっていますか?問い合わせが来た後、実際にカウンセリングに来てくれましたか?カウンセリングの後、契約に至りましたか?
今回、ある医療系クライアントのGoogle広告を5ヶ月分(11月〜3月)かけてファネル分析しました。月間予算は2,000万円規模。複数キャンペーン、約30の広告グループを運用しているアカウントです。
その結果、管理画面だけでは絶対に見つからない「穴」がいくつも見つかりました。合計すると、月に約100万円の無駄が発生していた計算です。
穴その1: 問い合わせはあるのに、誰も来ない広告グループ
最初に見つけたのは、「問い合わせは獲得できているが、カウンセリングに1件も到達していない広告グループ」の存在です。
Google広告の管理画面だけ見ると、この広告グループは「CV獲得できている。問題なし」に見えます。CPAも悪くない。でも、その先の歩留まりを追うと、5ヶ月間でカウンセリング到達ゼロ。
こういった広告グループが複数存在していて、5ヶ月で合計数十万円から100万円を消化していました。
なぜこういうことが起きるのか。いくつかパターンがあります。
- 検索意図と実際のサービス内容にギャップがある
- 問い合わせの質が低い(情報収集目的、冷やかし)
- 競合名で流入しているため、自社サービスへの関心が薄い
管理画面の「CV」は「フォーム送信」や「電話タップ」を計測しているだけです。その人がその後どう行動したかは、広告の管理画面には出てきません。
穴その2: カウンセリングまで来るのに、1件も成約しないキャンペーン
次に発見したのは、もっと厄介なケースです。
問い合わせもある。カウンセリングにも到達している。でも、5ヶ月間で成約(契約)がゼロのキャンペーンが存在していました。月の予算規模は約130万円。つまり5ヶ月で650万円を使って、売上への貢献がゼロです。
ファネルで整理するとこうなります。
| ファネル段階 | 該当キャンペーンの実態 |
|---|---|
| 広告クリック | あり(通常通り) |
| 問い合わせ(CV) | あり(管理画面上は正常) |
| カウンセリング到達 | あり(数件/月) |
| 成約(契約) | 0件(5ヶ月間) |
管理画面のCVだけ見ていたら、このキャンペーンは「まあまあ動いている」ように見えてしまう。これが、ファネル分析なしでは見つけられない典型的な穴です。
穴その3: 間接効果の過大評価という落とし穴
「でも、そのキャンペーンは間接的に貢献しているんじゃないの?」
これは真っ先に出てくる反論です。そして、自分も最初はそう考えていました。
GA4にはアシストコンバージョンというレポートがあります。直接コンバージョンには至らなかったけれど、ユーザーの経路のどこかでタッチポイントがあった、という数字です。これを見ると、成約ゼロのキャンペーンにも「間接貢献」があるように見えます。
当初の見積もりでは、間接効果は全体の約30%程度あるのではないかと想定していました。
ところが、広告効果測定ツール(アドエビスなどの第三者計測ツール)で実際のユーザー経路を1件ずつ追跡してみたところ、間接効果は5〜10%程度にとどまっていました。
| 評価方法 | 間接効果の見積もり |
|---|---|
| GA4アシストコンバージョン(推定) | 約30% |
| 広告効果測定ツールで実経路を検証 | 5〜10% |
GA4のアシストコンバージョンは「同一セッション内のタッチポイント」を広く拾うため、実態よりも大きく見える傾向があります。広告効果測定ツールでユーザー単位の経路を追跡すると、「本当にその広告がきっかけで来た人」はかなり絞られます。
間接効果は「ありそう」で判断してはいけません。実データで検証しないと、成果の出ていない施策を「間接的に効いているから」と延命させてしまう。これは高額な広告予算になるほど危険です。
穴を塞いだら、月100万円が浮いた
分析結果をもとに、4月から以下の改善を実施しました。
1. カウンセリング到達ゼロ・成約ゼロの施策を停止
5ヶ月間のデータで到達ゼロまたは成約ゼロが確定している広告グループ・キャンペーンを停止しました。これだけで月約100万円分の予算が浮きます。
2. 成約実績のある広告グループに予算を再配分
分析で見えた面白い事実があります。成約実績のある広告グループの中に、予算が絞られていて機会損失を起こしているものがありました。成約が取れているのに、予算上限に達して広告が出なくなっていた。
成果の出ていない施策を止めて浮いた予算を、こちらに回す。単純なことですが、ファネルの出口まで見ないと「どこに回すべきか」が判断できません。
3. 大きすぎる広告グループをA/B/Cに分割
1つの広告グループに、性質の異なるキーワードが混在しているケースも見つかりました。疾患の症状系、治療法系、競合指名系が1つのグループに入っている。これでは、どのキーワード群が成約に貢献しているか分離できません。
これを目的別に3グループに分割し、テスト運用を開始しました。
ファネル分析を始めるなら、この順番で
- 広告の成果地点を定義する
管理画面のCVではなく、ビジネス上の最終成果(成約・契約・来店など)が何かを明確にする - 広告グループ単位で最終成果を紐づける
UTMパラメータやフォームの隠しフィールドを活用して、どの広告グループ経由の問い合わせかを後工程でも追跡できるようにする。具体的な実装方法はGTMでUTMパラメータをフォームに引き継ぐ方法で解説しています - 5ヶ月分以上のデータで評価する
1〜2ヶ月だと偶然の可能性が排除できません。最低でも3ヶ月、できれば5ヶ月分で判断する - 間接効果は第三者計測で検証する
GA4のアシストコンバージョンだけで判断しない。広告効果測定ツールや、CRMデータとの突合で「本当にその広告経由か」を検証する - 停止→再配分→分割の順で改善する
いきなり広告グループを細分化するのではなく、まず明らかに成果の出ていないものを止める。止めて浮いた予算を、実績のある施策に振り向ける。その上で構造を見直す
なぜ管理画面だけでは見えないのか
Google広告の管理画面は、広告のパフォーマンスを測る道具です。クリック、表示回数、CV数、CPA。これらは全て「広告側から見た指標」です。
一方、ビジネスの成果は「顧客側から見た指標」です。問い合わせの後に来店したか。来店した後に契約したか。この2つの視点の間にギャップがある限り、管理画面の数字だけで広告の価値は判断できません。
特に高単価のサービス(医療、不動産、BtoB SaaSなど)では、1件の成約がCVの何十倍もの価値を持ちます。CVが10件あっても成約がゼロなら、そのCVには価値がない。逆に、CVが2件でも2件とも成約していれば、そのCVは非常に価値が高い。
この判断をするために必要なのが、ファネル分析です。
データの取得・連携の仕組みを一度構築してしまえば、毎月の分析は自動化できます。AI・自動化ツールを使った業務効率化の記事でも触れていますが、データの収集・整形・レポート化はかなりの部分を自動化できる時代です。最初の仕組みづくりに手間はかかりますが、一度作れば半永久的に使えます。
まとめ — 広告の「出口」を見よう
- 管理画面のCVは「入口」でしかない。問い合わせの先(来店・カウンセリング・成約)まで追って初めて、広告の本当の価値がわかる
- 「効いていそう」は危険。間接効果はGA4の数字だけで判断せず、ユーザー経路の実データで検証する
- 穴を塞ぐだけで予算は作れる。新しい施策を追加するより、成果の出ていない施策を止める方が即効性がある
- 成約ベースで見ると、予算配分の正解が変わる。CVベースでは見えなかった「予算を増やすべき施策」が見えてくる
月間数百万〜数千万円規模の広告を運用しているなら、一度ファネルの出口まで追いかけてみてください。見えなかった穴が、きっと見つかるはずです。



