はじめに:Web制作の現場で、いま何が起きているか
「最近、Web制作の見積もりが下がってきた」「クライアントからAIを使ったら安くできるんじゃないかと言われた」——こんな声を、制作会社や個人のフリーランサーから聞くことが増えています。
実際のところ、AIツールの普及はWeb制作の現場を大きく変えつつあります。2023年ごろからデザイン支援・コーディング補完・文章生成のツールが急速に実用レベルに達し、2026年の現在では「AIを使わないWeb制作」のほうが非効率と言われるほどになってきました。
ただし、AIツールならなんでもよいわけではありません。種類が多すぎて何を選べばよいか分からない、導入したけど結局使いこなせていない、という話もよく聞きます。
この記事では、Web制作の現場で実際に役立つAIツールを10本に絞り込み、それぞれの特徴・料金・メリット・デメリット、そして具体的な使い方まで解説します。AIを使ったWeb制作の全体像を把握したい方、ツール選びで迷っている方に向けた内容です。
1.Web制作AIツールの選び方
AI web制作ツールは大きく4つの用途に分類できます。自分の業務でどのフェーズが時間を食っているかを先に整理しておくと、ツール選びがスムーズになります。
1-1.用途別:4つのカテゴリ
デザイン生成系 ワイヤーフレームの作成、UIの提案、レイアウト調整などをAIが補助します。デザインの方向性が決まっていない初期段階や、バリエーションを素早く出したいときに便利です。
コーディング支援系 コードの自動補完、エラーの指摘、リファクタリング提案などを行います。プログラマーはもちろん、ノーコード・ローコードの現場でも活用が進んでいます。
コンテンツ作成系 記事本文・キャッチコピー・メタディスクリプションの作成から、構成案の整理まで担います。ライターの下書き作成やSEOコンテンツ量産に強みがあります。
画像・ビジュアル生成系 テキストから画像を生成したり、既存画像の編集を行います。バナー素材・アイキャッチ・イラストなどを内製化したい場合に重宝します。
1-2.ツール選びで押さえるべき3点
- 日本語への対応度:コンテンツ系のツールは特に日本語品質に差があります。
- 既存ツールとの連携:FigmaやVSCodeなど、普段使いの環境とどれくらい統合できるかを確認しましょう。
- コストと効果のバランス:月額数千円でも、使わなければ損です。無料トライアルで費用対効果を確かめてから契約するのが基本です。
2.おすすめAIツール10選
2-1.デザイン系
1. Figma AI
概要 デザインツールの定番「Figma」に統合されたAI機能群です。2024年以降、「Make Designs」「Rename Layers」「Summarize」などの機能が順次追加され、デザイン作業の自動化が進んでいます。
料金 Figma本体のプランに含まれます。無料プランでも一部のAI機能が利用可能。プロフェッショナルプランは月額12ドル(年払い)から。
メリット
- すでにFigmaを使っている場合、追加の学習コストがほぼない
- デザインデータと直接連携するため、AIの提案をそのまま反映できる
- チームで共有しやすい
デメリット
- AI機能の完成度はまだ発展途上な部分がある
- 複雑なデザイン指示には限界がある
おすすめの使い方 レイヤー名の整理やデザインの要素要約に使うと時短効果が高い。「Make Designs」でラフなレイアウトを出力し、それを叩き台にして手で整えるフローが現実的です。
2. Framer AI
概要 Webサイトをビジュアル的に構築できるツール「Framer」が持つAI機能。テキスト入力だけでWebページの骨格を自動生成でき、そのままホスティングまで完結します。
料金 無料プランあり。有料プランは月額15ドル(ミニマル)〜25ドル(ベーシック)程度。
メリット
- プロンプト一発でファーストビューを含むページが生成される
- デザインからコーディングまで一気通貫
- レスポンシブ対応も自動で行われる
デメリット
- カスタマイズの自由度はFigmaより低い
- 生成されるデザインがやや画一的になりやすい
- 日本語のプロンプトは精度が落ちることがある
おすすめの使い方 ランディングページや簡単なコーポレートサイトのプロトタイプ制作に向いています。クライアントへの初期提案用のモックアップを短時間で作りたいときに特に効果的です。
3. Webflow AI
概要 ノーコードWebサイトビルダー「Webflow」に搭載されたAIアシスタント。コピーライティングのサポートや、コンポーネントの生成補助などが行えます。
料金 Webflow本体のプランに含まれます。スターターは無料。サイトプランは月額14ドル〜。
メリット
- Webflowの制作フローの中にシームレスに組み込まれている
- CMSや会員機能など、Webflowの豊富な機能と組み合わせやすい
- テキスト内容の調整・生成を画面上で完結できる
デメリット
- AI機能単体の完成度はまだ限定的
- Webflow自体の学習コストが高め
おすすめの使い方 Webflowで制作中のページのコピーを磨くために使うと便利。セクション内のテキストをAIに改善させながら、Webflowのデザイン編集とセットで進めると効率がよいです。
2-2.コーディング系
4. GitHub Copilot
概要 GitHubとOpenAIが共同開発したコーディング補完AI。VSCodeをはじめ多くのエディタで動作し、コードを書く途中でAIがリアルタイムに続きを提案してくれます。
料金 個人向けは月額10ドル(年払いは月8.3ドル相当)。無料枠として月50回の補完が利用可能になりました(2024年末から)。
メリット
- 対応言語・フレームワークが幅広い(HTML/CSS/JS/PHP/Pythonなど)
- エディタに組み込まれているため作業フローを変えずに使える
- チャット機能でコードの説明や改善案も聞ける
デメリット
- 提案されたコードをそのまま使うと、意図と異なる実装になることがある
- 学習データに古い情報が含まれる場合がある
- コード品質の最終判断は自分で行う必要がある
おすすめの使い方 繰り返し書くようなボイラープレートコード(フォームバリデーション、API呼び出しなど)の自動補完に真価を発揮します。新しいフレームワークの構文を覚えながら使うと学習効果も高い。
5. Cursor
概要 VSCodeをベースに開発されたAI特化型エディタ。コードベース全体を把握した上でAIが補完・編集・リファクタリングを提案できるのが最大の特徴です。
料金 無料プランあり(月500回のAI補完)。Proプランは月20ドル。
メリット
- プロジェクト全体のコードを文脈として理解した上で提案してくれる
- 「このファイルをこう書き換えて」という自然言語での指示が通りやすい
- VSCodeの拡張機能がそのまま使える
デメリット
- 月額コストがGitHub Copilotより高い
- 大規模プロジェクトでは動作が重くなることがある
おすすめの使い方 既存のWordPressテーマやプラグインを改修する業務に向いています。「このPHPファイルの処理をこう変更して」と伝えると、ファイルの構造を踏まえた上で修正してくれます。コード量が多い既存案件のリファクタリングで特に力を発揮します。
6. Claude Code
概要 Anthropicが開発したAI「Claude」をベースにしたコーディング支援CLIツール。ターミナルから使うタイプで、ファイルの読み書き・コマンド実行・複数ファイルにまたがる実装を一括で行えます。
料金 Claude Proプランに含まれます(月20ドル)。API経由での利用も可能(従量課金)。
メリット
- ファイルの作成・編集・削除をAIが直接実行できる
- 指示の理解精度が高く、複雑な実装要件も把握しやすい
- テスト作成・ドキュメント生成なども一括依頼できる
デメリット
- GUIがなく、ターミナルに慣れていないと敷居が高い
- 自律的に作業を進めるため、意図しない変更が発生するリスクがある(こまめな確認が必要)
おすすめの使い方 「新しいお問い合わせページを作って。フォームはname・email・messageの3項目で、送信後はThankYouページにリダイレクト」という粒度の指示でコード一式を生成させると時短効果が大きい。実装経験のあるディレクターが仕様を整理してClaude Codeに任せる、という役割分担も実用的です。
2-3.コンテンツ系
7. ChatGPT(GPT-4o)
概要 OpenAIが提供する汎用型AIチャット。Web制作においては、ページのコピーライティング・記事構成・FAQ作成・メタディスクリプション生成など、テキスト周りの作業で広く活用されています。
料金 無料プランあり(GPT-4oの利用に制限あり)。Plusプランは月20ドル。
メリット
- 日本語の品質が高く、自然な文章を生成しやすい
- 会話形式で何度も修正できるため、方向性の調整がしやすい
- プラグインや連携ツールが豊富
デメリット
- 長文になると前後の文脈がぶれやすい
- 情報の正確性は必ず確認が必要(ハルシネーション問題)
- 最新情報には限界がある(Web検索機能で補完可能)
おすすめの使い方 ページの訴求文・CTAボタンのテキスト・FAQのQ&Aなど、短めのコンテンツを大量に出力したいときに向いています。「コンバージョン率を上げるために、このサービスの魅力を3つのポイントで伝えてください。ターゲットは30代の中小企業経営者です」のように、ターゲットや目的を具体的に伝えると精度が上がります。
8. Claude(Anthropic)
概要 Anthropicが開発したAI。長文の処理能力と指示の理解精度が特徴で、複雑な構成の記事作成や、トーン調整が必要な文書作成に強みがあります。
料金 無料プランあり(Claude 3.5 Sonnetに一部制限)。Proプランは月20ドル。
メリット
- 長い文脈(プロジェクトの背景・ブランドトーンなど)を保持した上で文章を生成できる
- 「この表現は避けてほしい」などの細かい制約を守ってくれやすい
- 誠実さを重視した設計で、不確かな情報を断定しにくい
デメリット
- ChatGPTと比べると一部の用途で知名度・事例が少ない
- 画像生成機能はない(Claudeは画像分析はできるが生成はできない)
おすすめの使い方 サービスページのLPや会社概要、採用ページなど、ブランドの世界観を大切にしたいコンテンツ制作に向いています。事前に「このブランドのトーンは○○です」と伝えておくと、一貫したスタイルで出力してくれます。SEO記事の一次草稿作成にも精度が高く使えます。
2-4.画像・ビジュアル系
9. Midjourney
概要 テキストから高品質な画像を生成するAIツール。アート性の高いビジュアルや、写真に近いリアルな画像の生成が得意で、Web制作のビジュアル素材制作に広く使われています。
料金 月額10ドル(ベーシック)〜120ドル(メガ)。無料プランは廃止されています。
メリット
- 生成される画像のクオリティが高い
- スタイルの幅が広く、写実的から抽象的まで対応できる
- 日本語プロンプトにも対応(英語のほうが精度は高い)
デメリット
- 操作がDiscordベースで独特(専用アプリは開発中)
- 人物の顔・手の生成精度に課題が残る
- 商用利用の条件はプランによって異なる(要確認)
おすすめの使い方 サービスの世界観を表す抽象的なビジュアルや、ブログ記事のアイキャッチ画像に向いています。「Japanese small business owner, working in a cozy office, natural light, editorial photography style」のように英語で具体的に指定すると品質が安定します。
10. DALL-E(OpenAI)
概要 OpenAIが開発した画像生成AI。ChatGPTのインターフェースから直接使えるため、ChatGPT Plusを契約していれば追加費用なしで利用できます。
料金 ChatGPT Plus(月20ドル)に含まれます。APIは1枚あたり数セント〜。
メリット
- ChatGPTと同じ画面で使えるため、テキストと画像の生成をシームレスに組み合わせられる
- 指示文の日本語対応度が高い
- 既存画像を参照させた上での生成(バリエーション作成)ができる
デメリット
- Midjourneyと比べると、アート性の高い画像はやや見劣りする場面がある
- 1回あたりの生成速度がやや遅い
おすすめの使い方 「このテキストに合うシンプルなイラスト風の画像を作って」という使い方が現実的。バナーのダミー素材やLPのファーストビュー用のイメージ画像を素早く用意したいときに使いやすいです。
3.AIツールを組み合わせた実践ワークフロー
個々のツールの性能を活かすには、ツールを組み合わせた制作フローを設計することが重要です。以下は、中小企業向けのコーポレートサイトを制作する際の、AI活用ワークフローの一例です。
3-1.ステップ1:構成とコンテンツの設計(ChatGPT / Claude)
まずサイトの構成とコピーをAIで下書きします。
- 業種・ターゲット・競合サイトの傾向をAIに伝える
- 各ページの見出し構成とコピーの初稿を生成させる
- ブランドトーンに合わせて修正・調整する
この段階で「誰に何を伝えるか」を言語化しておくことが、後工程のデザインやコーディングの精度を大きく左右します。
3-2.ステップ2:ビジュアルとデザインのプロトタイプ(Framer AI / Figma AI)
コンテンツの骨格ができたら、デザインに移ります。
- Framer AIにサービス概要とターゲットを伝えてファーストビューを自動生成
- 複数パターンを出力させてクライアントに方向性を確認
- 採用したデザインをFigmaに持ち込んで詳細を調整
この段階では「完璧なデザイン」を目指すのではなく、クライアントとの合意形成のための素材を素早く作ることを目的にします。
3-3.ステップ3:画像・素材の制作(Midjourney / DALL-E)
デザインの方向が決まったら、必要なビジュアルを生成します。
- トップページのヒーローイメージ
- サービス紹介セクションのアイコン・イラスト
- ブログ記事のアイキャッチ
ストックフォトとAI生成画像を組み合わせることで、素材にかかるコストを削減しながらオリジナリティを出せます。
3-4.ステップ4:コーディングと実装(Cursor / Claude Code / GitHub Copilot)
デザインと素材が揃ったら、コーディングに入ります。
- Cursorを使い、デザインカンプを見ながらHTML/CSSのコーディングを進める
- 繰り返しパターンのコンポーネント(カードUI・フォームなど)はGitHub Copilotで補完
- 複雑な実装(API連携・フォーム処理など)はClaude Codeに仕様を伝えて生成させる
コーディング段階でのAI活用は、特に定型的な処理で効果が出やすいです。
3-5.ステップ5:SEOコンテンツの仕上げ(Claude / ChatGPT)
実装が完了したら、SEOに向けたコンテンツを整えます。
- メタディスクリプション・title タグのバリエーションをAIで複数生成
- ブログ記事の初稿をAIで作成し、人の手で加筆・修正
- altテキストやOGPテキストの生成
4.AIツール導入の注意点
4-1.著作権・ライセンスの確認
AI生成コンテンツの著作権は、まだ法的に整理されていない部分があります。特に画像については、生成AIが学習データとして使用した素材の著作権問題が議論されています。商業利用する場合は、各ツールの利用規約を必ず確認してください。
また、AI生成のコードにも、特定のライセンスが付いたオープンソースコードが混入するリスクが指摘されています。商用プロジェクトでは、コードレビューの段階で確認を行うことが望ましいです。
4-2.品質チェックの工数を見込む
AIは優れたアシスタントですが、完成品をそのまま納品できることは少ないです。コピーには事実誤認が含まれることがあり、コードには動作するが意図と異なる実装が紛れることもあります。「AIで時短した分、チェックに使う」という感覚で運用するとうまくいきます。
特にSEOコンテンツは、Googleが「役に立つコンテンツ」を重視する評価基準(Helpful Content Update)に対応するため、AI生成のままでは不十分な場合があります。人の知見・経験を上乗せして、オリジナリティのある内容に仕上げることが重要です。
4-3.コスト管理:使いすぎに注意
各ツールの月額を積み上げると、気づけば毎月1〜2万円のサブスクリプションになっていることがあります。ツールごとに「このコストに見合う仕事をしているか」を定期的に確認し、使っていないものは解約する習慣をつけておきましょう。
目安として、フリーランス・小規模制作会社であれば以下の組み合わせでスタートするのが現実的です。
- ChatGPT Plus(月20ドル):コンテンツ作成 + 画像生成(DALL-E)
- GitHub Copilot(月10ドル):コーディング補完
- Figma(無料〜月12ドル):デザイン
合計で月30〜40ドル程度から始め、業務の幅が広がるにつれて追加を検討するのがおすすめです。
5.まとめ
Web制作にAIを取り入れることは、もはやトレンドではなく、競合に遅れを取らないための現実的な選択になってきました。ただし、ツールを入れるだけでは変わりません。どの工程にどのツールを当てるか、そしてどこまでAIに任せて、どこに人の判断を入れるかを設計することが、AI web制作の本質です。
10種類のツールを一度に使いこなそうとする必要はありません。まずは自分の業務で「ここに時間がかかっている」と感じる工程を一つ特定し、そこに合ったツールを試してみてください。小さな成功体験を積み重ねることが、AI活用スキルを定着させる最短ルートです。
f2t.jpでは、Web制作のAIツール活用に関する支援も行っています。「どのツールを選べばよいか分からない」「導入はしたけど使いこなせていない」といった悩みがあれば、お気軽にご相談ください。中小企業のWeb制作・AI活用の現場に合わせた、具体的なアドバイスを提供しています。
























































